ラクタノ AI編集部
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「今日も記録が終わらず、スタッフが疲弊した顔で残業している……」
「利用者様ともっと話したいのに、パソコンに向かう時間の方が長い気がする」
小規模介護事業所を経営されている皆様、このようなジレンマを抱えていませんか?
人手不足が深刻化する中、現場の負担を減らしつつ、ケアの質を維持・向上させることは経営の最重要課題です。そこで今、劇的な効果を上げているのが「音声入力AI」による記録業務の自動化です。
「うちはITに詳しい職員がいないから無理だ」
「ベテラン職員が新しいやり方に反発するだろう」
そう思われるかもしれません。しかし、最新の事例では、キーボード入力が苦手な職員ほど、音声入力によって業務効率を飛躍的に向上させています。
本記事では、実際に現場で成果を上げている企業の事例と、明日からコストをかけずに試せる具体的な方法を解説します。
なぜ今、「音声入力」なのか? 数字で見る現場の現実
まずは、客観的なデータから介護現場の現状を見てみましょう。
厚生労働省関連の調査や民間企業のデータによると、介護職員の1日の業務時間のうち、記録業務が占める割合は約20〜25%に達すると言われています。1シフトあたり1.5〜2時間もの時間が、パソコンやタブレット、あるいは紙への記入に費やされているのです。
これが「残業」や「利用者と向き合う時間の不足」の主因となっています。さらに、2025年には約32万人、2040年には約69万人の介護人材が不足すると推計されており、業務効率化は待ったなしの状況です。
しかし、希望はあります。音声入力やAIを活用した事例では、この記録業務時間を30%〜50%削減できたという報告が多数上がっています。NTT東日本と新潟県上越市の実証実験では、業務効率が56%向上したという驚くべきデータも出ています。
「書く」から「話す」へ変えるだけで、現場の景色は一変する可能性があるのです。
【実録】現場はこう変わった! 成功事例3選
では、実際に音声入力AIを導入して成果を上げた事業所の事例を見ていきましょう。規模や課題感が近い事例があれば、ぜひ参考にしてください。
事例1:記録時間を「15分から1分」へ短縮(ケアプラン湊)
千葉県鎌ケ谷市の居宅介護支援事業所「ケアプラン湊」では、利用者宅でのモニタリングや会議の記録にAIを活用しました。
【取り組み内容】
これまでノートにメモを取り、事務所に戻ってから記憶を頼りにPC入力していた作業を刷新。AI音声入力ツール「ミルモレコーダー」を導入し、会話を自動で録音・文字起こし・要約する運用に切り替えました。
【得られた成果】
- モニタリング記録の作成時間が、1件あたり15分から1分へ劇的に短縮。
- 事業所全体で月合計38時間もの業務時間を創出。
特筆すべきは、数字以上の「心理的効果」です。現場からは「『後で書かなければならない』というプレッシャーから解放された」「以前は記録のために話を遮ることもあったが、今は最後までしっかり話を聞けるようになった」という声が上がっています。記録のための介護ではなく、利用者のための介護を取り戻した好例です。
事例2:1人あたりの記録時間を半分以下に(株式会社丸互)
新潟県上越市の株式会社丸互では、NTT東日本などと協力し、生成AIを活用した記録業務の自動化に取り組みました。
【取り組み内容】
スタッフがノートPCに向かって報告内容を口頭で話すと、AIがそれを文字化し、食事・排泄・入浴などの項目に自動で仕分けしてシステムに登録する仕組みを構築しました。
【得られた成果】
キーボード入力が苦手なスタッフにとって、話すだけで記録が完了するシステムは強力な武器となります。誤認識もゼロではありませんが、ゼロから手打ちする労力に比べれば、修正の手間は微々たるものです。
事例3:離職率が半減した特別養護老人ホーム
ある特別養護老人ホームでは、紙記録からタブレット入力(音声入力含む)への完全移行と、見守りセンサーの連携を行いました。
【得られた成果】
- 1シフトあたりの記録時間が2.3時間から0.5時間へと約78%削減。
- 月間の残業時間が45時間から30時間へ減少。
- 離職率が導入前の18.5%から9.2%へと半減。
「早く帰れる」「業務が楽になる」という実感は、スタッフの定着率に直結します。ICT活用は単なる時短術ではなく、人材確保のための重要な経営戦略であることがわかります。
「ウチの職員には無理……」を覆す導入3ステップ
「事例はすごいけれど、ウチの職員は高齢でスマホも苦手だし……」と不安に思う方も多いでしょう。
失敗するパターンの多くは、トップダウンでいきなり全員に高機能なシステムを使わせようとすることです。現場の抵抗を最小限に抑えるためには、以下の「3ステップ導入法」をおすすめします。
ステップ1:小さく試して「成功体験」を作る(1〜3ヶ月目)
まずは、全職員で始める必要はありません。「ITに比較的抵抗がない職員」や「変化に前向きなリーダー」を2〜3名選び、トライアルチームを作ります。
この段階では高額なシステムを入れる必要もありません。後述する無料ツールを使い、「音声入力を使ったら、いつもより10分早く終わった」という小さな成功体験を作ることが目的です。この事実が口コミで広がると、他の職員の興味を引くことができます。
ステップ2:ルールを作り、並行運用する(4〜6ヶ月目)
トライアルチームのやり方をマニュアル化します。重要なのは、いきなり紙を廃止しないことです。「紙でもいいし、音声入力でもいい」という期間を設けます。
ただし、「3ヶ月後には完全に切り替えます」という期限は設定しましょう。この期間に、ベテラン職員向けのスマホ教室を開くなど、丁寧なフォローを行います。
ステップ3:全体展開し、空いた時間を還元する(7ヶ月目以降)
全員で運用を開始します。ここで重要なのは、空いた時間をどう使うかです。「早く帰る」ことも重要ですが、「空いた時間で利用者様とゆっくりお茶を飲んだ」「リハビリの時間を増やせた」といった、ケアの質向上につながったエピソードを共有してください。
「楽をするため」ではなく「良いケアをするため」という目的が共有されれば、職員のモチベーションは大きく変わります。
明日から0円で試せる! ツール&プロンプト実践編
では、具体的に何を使えばいいのでしょうか? 予算をかけずに明日から試せる方法をご紹介します。
1. Google ドキュメント(無料)
PCやスマホで使えるGoogleの文書作成ツールです。実は非常に精度の高い「音声入力」機能が標準搭載されています。
- 使い方: ツールメニューから「音声入力」を選び、マイクアイコンをクリックして話すだけ。
- 活用シーン: 会議の議事録作成、長文の報告書の下書き。
「えー、あー」といった言葉が入っても、後でChatGPTなどで整形すれば問題ありません。まずは「キーボードを打たずに文字が入る」体験をしてみてください。
2. ChatGPT(無料版あり)
生成AIの代表格です。音声入力した乱雑なメモを、きれいな文章に整えるのに最適です。個人情報を入れない(Aさん、Bさんとする)ことに注意すれば、強力なアシスタントになります。
以下に、そのままコピーして使える「プロンプト(指示文)」を用意しました。
【コピペOK】魔法のプロンプト例
① 箇条書きメモから「申し送り」を作成する
プロンプト:
あなたはプロの介護職員です。以下の箇条書きのメモをもとに、わかりやすく簡潔な「申し送り事項」を作成してください。文体は「です・ます」調で、客観的な事実と主観的な観察を分けて記述してください。
>
【メモ】
* 田中さん、昼食半分残す
* 元気ない感じ
* 14時に娘さんから電話あり、週末面会に来るとのこと
* 入浴は拒否、清拭のみ実施
出力イメージ:
【田中様 申し送り】
* 食事: 昼食は1/2摂取でした。食欲不振の様子が見られます。
* 入浴: 入浴拒否があったため、清拭にて対応しました。
* 連絡事項: 14時にご息女より連絡があり、今週末に面会予定とのことです。
② 家族への報告メールを作成する
プロンプト:
以下の内容をもとに、利用者のご家族へ送る「本日のご様子」のメール文面を作成してください。安心感を与える丁寧なトーンでお願いします。
>
【内容】
* レクリエーションで歌を歌った、楽しそうだった
* おやつは完食
* 転倒などはなし
3. 介護特化型ツール(有料)
予算が許すなら、介護用語に特化したツールも検討価値があります。
- ミルモレコーダー: 介護現場の会話を録音・文字起こし・要約まで自動化。
- ハナスト: 介助中にハンズフリーで「食事、全量摂取」と話すだけで記録完了。
これらは専門用語の認識精度が高く、セキュリティ面でも安心です。
導入前に知っておくべき「落とし穴」と対策
最後に、導入を成功させるための注意点をお伝えします。
1. 通信環境(Wi-Fi)の確認
音声入力やクラウドツールはインターネット接続が必須です。居室や浴室の奥など、電波が届かない場所があると「使えない」というレッテルを貼られてしまいます。事前にWi-Fiの中継機を設置するなど、環境整備を行いましょう。
2. 個人情報の取り扱い
無料の生成AI(ChatGPTなど)を使用する場合、個人名や特定できる情報をそのまま入力するのは避けましょう。「A様」「利用者様」といった表現に置き換えるか、学習データとして利用されない設定(オプトアウト)を行う必要があります。有料の介護特化型ツールであれば、この点はセキュリティ対策がなされているものが多いです。
まとめ:まずは「自分の業務」から試してみませんか?
音声入力AIによる業務改善のポイントをまとめます。
「AIなんて難しそう」と思われるかもしれませんが、実は「キーボードが苦手な人」のための技術です。まずは管理者である皆様自身が、明日の日報やメール作成で音声入力を試してみてください。
「話すだけで文字になる」便利さを実感できれば、きっと現場のスタッフにも自信を持って勧められるはずです。その小さな一歩が、スタッフの笑顔と、利用者様へのより良いケアにつながっていきます。
