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政策・法規制

「AI活用の努力義務化」と「課徴金」にどう備える?2026年個人情報保護法改正と中小企業の対応ポイント

AI政策個人情報保護法コンプライアンスAI推進法
AI編集部

ラクタノ AI編集部

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概要

現在国会で審議が進められている「個人情報保護法」の改正案。この法案は、一言で言えば「AIをより開発・活用しやすくするためのルールの緩和」と、「悪質なルール違反に対するペナルティ(課徴金制度)の強化」をセットにしたものです。

中小企業の経営者様の中には、「個人情報保護法の改正なんて、大企業やIT企業だけの話では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今回の改正はすべての企業にとって「自分ごと」として捉えるべき重要な内容を含んでいます。

なぜなら、生成AIなどの新しいテクノロジーが急速に業務へ普及する中、顧客データや社内データをどのようにAIに入力・活用し、どう守るのかというルール作りが、企業の規模を問わず求められているからです。本記事では、この法改正が中小企業のビジネスにどのような影響を与え、具体的にどのような対策を講じるべきかをわかりやすく解説します。

背景

今回の個人情報保護法改正の背景には、日本政府が掲げる「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指すという強力な方針があります。

その大きな転換点となったのが、昨年(2025年)9月に全面施行された「AI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」です。この法律の中で非常に重要なポイントは、大企業だけでなく中小企業を含むすべての事業者に対して、「積極的にAIを活用して事業効率化などに努めること」が「努力義務」として定められた点です。つまり、国を挙げて「企業は生産性向上のためにAIをどんどん使っていきましょう」と推奨しているのです。

しかし、AIを賢く使うためには「データ」が欠かせません。AIに学習させたり、社内のデータを読み込ませて業務を効率化したりする過程で、個人情報がどのように扱われるべきかという明確なルールが必要不可欠になりました。

そこで、AI活用の促進(データ連携の円滑化)と、個人の権利保護(プライバシーの確保)を高いレベルで両立させるために、2026年4月に「個人情報保護法改正案」が閣議決定され、国会へ提出されました。現在、衆議院を可決し参議院で審議されているこの法案は、私たちが安心してAIを活用できる社会を作るための「新しい交通ルール」と言えます。

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ポイント解説

それでは、今回の個人情報保護法改正案の具体的な内容について、中小企業の実務に関わる3つの重要ポイントを噛み砕いて解説します。

1. AI開発・統計作成のための「データ利用の緩和」

1つ目のポイントは、AIの学習や統計データの作成を目的とする場合、一定の条件をクリアすれば「本人の同意を得ずに個人データを利用・提供できるようになる」というルールの緩和です。

これまで、例えば病歴などのデリケートな情報(要配慮個人情報)は、取り扱いのハードルが非常に高く、AI開発の学習データとして活用することが困難でした。しかし改正案では、「統計情報の作成のみに利用すること」を提供先との契約で確実に約束したり、利用目的をあらかじめ公表したりするなどの条件を満たせば、円滑にデータを活用できるようになります。

これにより、医療分野やマーケティング分野などでのAI開発が加速し、中小企業にとってもより賢く便利なAIサービスを利用できる環境が整うと期待されています。

2. 悪質な違反を取り締まる「課徴金制度」の新設

2つ目は、ルール違反に対する厳しいペナルティである「課徴金制度」の新設です。

課徴金とは、国が違反企業に対して命じる金銭的な罰則のことです。改正案では、個人情報を不適切に取得・利用し、それによって「不当に利益(儲け)を得た事業者」に対し、個人情報保護委員会がその利益相当額の納付を命じることができるようになります。

これは、「法律に違反してでもデータを売って儲けよう」とする悪質なビジネスを強く抑止するためのものです。真面目にビジネスをしている多くの中小企業にとっては、自社のデータや顧客が守られる安心な制度だと言えます。

3. 16歳未満の「こどもの個人情報保護」

3つ目は、16歳未満のこどもの個人情報に対する特別な配慮です。

こどもは大人に比べて、自分のデータがどのように使われるかを判断する力が十分ではありません。そのため、学習塾やこども向けのサービス、アプリなどを展開している事業者は、こどもの個人情報を取得・利用する際に、保護者の同意を得るプロセスを明確にするなど、より一層慎重な対応体制の構築が求められるようになります。

中小企業が法改正に備え、コンプライアンスを遵守しながら安全にAIを実務に組み込む具体的なアプローチについては、過去記事【保険代理店・FP向け】提案書作成を自動化!リコー版Difyテンプレートの活用ガイドで、厳しいセキュリティ要件に対応するAI構築法を詳しく解説しています。

企業への影響

AI活用の努力義務化と、個人情報保護法の改正。この2つの大きな波は、中小企業に「業務効率化」という大きなチャンスをもたらす一方で、適切な管理体制がなければ思わぬトラブルを招く可能性もあります。経営者が把握しておくべきリスクと、取るべきアクションをまとめました。

直面する2つのリスク

① 情報漏洩と「課徴金」のリスク

社内のルールが曖昧なまま従業員が生成AIを利用し、顧客の個人情報や会社の機密情報を不用意にAIに入力してしまうと、情報漏洩事故に直結します。新設される課徴金制度は「悪質な違反」をターゲットにしていますが、管理不行き届きによる情報流出も企業の信用を大きく失墜させます。

特に最近は、自社の社内規定やマニュアルをAIに読み込ませて回答させる「RAG(検索拡張生成)」という仕組みを導入する企業が増えています。この際、アクセス権限の設定を間違えると、本来見せてはいけない個人情報までAIが回答してしまうリスクがあるため、厳格な管理が必要です。

② ハルシネーション(事実と異なる出力)のリスク

AIは非常に優秀ですが、時として「もっともらしい嘘(ハルシネーション)」をつくことがあります。AIが生成した文章やデータを人間が確認せずにそのまま顧客に送信してしまったり、誤った情報に基づいて経営判断を下してしまったりするリスクです。AIはあくまで「優秀なアシスタント」であり、最終的な責任は人間が持つ必要があります。

中小企業が取るべき具体的アクション

これらのリスクを防ぎ、安全にAIを活用するために、以下のステップで社内体制を整えましょう。

1. 「AI利用ポリシー(ガイドライン)」の策定

まずは、会社として「AIに何を入力して良くて、何を入力してはいけないのか」を明確に定めたルール(AI利用ポリシー)を作りましょう。個人情報保護委員会や経済産業省など、政府が提供している各種ガイドラインやひな形を活用すると、ゼロから作る手間が省けてスムーズです。

2. 従業員への教育と啓発

ルールを作っても、現場の従業員が理解していなければ意味がありません。「個人情報や機密情報は入力しない」「AIの出力結果は必ず人間が事実確認(ファクトチェック)を行う」といった、人間中心のAI活用ルールを社内研修などで徹底しましょう。

3. データの棚卸しとアクセス権限の整理

自社がどのような個人情報を保有しているか(特に16歳未満のこどものデータや、病歴などの要配慮個人情報がないか)を改めて確認しましょう。また、社内システムやAIツールを利用する際のアクセス権限を「誰が・どのデータに触れて良いか」という基準で見直すことが大切です。

今後の見通し

現在参議院で審議されている個人情報保護法改正案は、可決・成立した後、公布から約2年後(2028年中)に全面施行される見通しです。

「まだ2年あるから大丈夫」と油断するのは禁物です。AIの進化と普及のスピードはすさまじく、すでに多くの企業で日常的にAIが使われています。法執行のタイミングを待つのではなく、今すぐ社内のデータ管理体制を見直し、AIの安全な利用ルールを整備することが、企業の競争力を高める第一歩となります。

日本政府の方針通り、これからの時代、AIを使わないことは企業にとって大きな機会損失になり得ます。「正しく怖がり、賢く使う」。新しい法律や政府のガイドラインを味方につけて、安全かつ積極的にAIを活用できる強い組織作りを進めていきましょう。

法改正と並行して進む政府主導のAI政策や、中小企業向けのAI導入支援の最新動向については、過去記事デジタル庁のガバメントAI「源内」実証開始!中小企業のビジネスはどう変わる?でも詳しく紹介しています。あわせて参考にしてください。

情報元

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