メインコンテンツへスキップ
Deep Research2026年2月5日

2025年改正個人情報保護法とAI活用に関する中小企業向け実務調査

policy

エグゼクティブサマリー

日本政府は、AI技術の急速な社会実装に対応するため、2025年の通常国会における個人情報保護法改正案の提出と、2026年以降の本格的な法執行に向けた準備を進めています。これまで「ガイドライン(ソフトロー)」中心であったAIガバナンスは、罰則を伴う「法規制(ハードロー)」へと移行しつつあり、中小企業であっても単なるツール利用者としての立場を超えた責任が求められます。本レポートでは、経営者が直面する法的義務の具体化、リスク管理の実務、および2026年度より拡充される公的支援制度について、最新の調査結果に基づき体系的に解説します。


1. 法改正のスケジュールと新たな規律要件

政府は個人情報保護法の「3年ごと見直し」に基づき、2025年通常国会への改正案提出、および2026年以降の全面施行を目指しています。ここでは、AI活用に直結する重要な法的概念の変更点を整理します。

プロファイリングと停止請求権の具体化

改正の核心は、AIによる「プロファイリング」の定義とそれに対する個人の権利強化です。

  • プロファイリングの定義: AIが個人の行動履歴や属性データを自動解析し、信用度、趣味嗜好、性格などを推測・判定する行為。
  • 利用停止請求権の導入: AIによる自動判定(採用選考の不採用、融資の拒絶等)が個人の権利利益を侵害する場合、本人がその判定プロセスの停止や、人間による再審査を要求できる権利が検討されています。
  • 説明責任(アカウンタビリティ): 企業は、AIがどのようなロジックで判定を下したかを説明できる体制を構築することが、努力義務から法的要件へと変化します。
  • 学習データ利用における透明性の厳格化

    AIの学習データに関しては、現行の著作権法第30条の4により原則として許諾なく利用可能ですが、個人情報保護の観点からは規制が強化されます。

  • 2026年以降の基準: データの「質」と「透明性」が問われます。プライバシー侵害の恐れがあるデータの除外や、不正に取得されたデータを利用しないための技術的措置(フィルタリング等)が、企業のガバナンス要件として不可欠となります。

  • 2. 実務対応:規程改定と運用ルール

    2024年4月策定の「AI事業者ガイドライン」および2025年の法改正を見据え、中小企業が直ちに着手すべき実務対応は以下の通りです。

    プライバシーポリシーの改定

    個人情報保護法第21条(利用目的の公表等)に基づき、生成AI利用に関する条項を明記する必要があります。以下は推奨される記載例です。

    **【記載例】**
    「当社は、業務効率化のため生成AIを利用することがあります。ただし、お客様から取得した個人情報を、AIの学習データとして提供することはありません。外部AIサービス利用時には、入力データが学習に利用されない設定(オプトアウト等)を適用し、安全に管理します。」

    外部AIサービス利用時の必須チェックリスト

    経済産業省・総務省の指針に準拠し、以下の3点を現場での必須確認事項として定着させる必要があります。

    1 非学習設定の確認: API利用や法人プラン契約により、入力データがAIの再学習に利用されない設定(オプトアウト)になっているか。
    2 機密情報の入力制限: 顧客の個人情報、未公開の技術情報、パスワード等を原則入力禁止とするルールが守られているか。
    3 出力結果の検証(Human-in-the-Loop): AIの回答をそのまま利用せず、必ず人間が正確性と権利侵害の有無を確認しているか。

    社内規定(AI利用規程)の整備

    就業規則や情報セキュリティ規定に、以下の項目を追加・修正します。

  • 責任者の明確化: CISO(最高情報セキュリティ責任者)等をAI管理責任者として配置。
  • 禁止事項の特定: 著作権侵害リスクのあるプロンプト入力や、差別的表現生成の禁止。
  • 報告義務: AI起因のトラブル(誤情報拡散、漏洩等)発生時の即時報告フローの確立。

  • 3. 中小企業への影響と責任範囲の拡大

    「自社はAIを開発していないから関係ない」という認識は、2025年以降通用しなくなります。政府は「AIビジネス利用者」としての責任を明確化しています。

    「利用者」としての法的責任

    SaaS型AIツール(ChatGPT等)を利用するだけの企業であっても、以下の責任を負います。

  • 入力データの管理責任: 機密情報や個人情報を不適切に入力し漏洩させた場合、ツール提供元ではなく、利用企業の責任となります。
  • 出力結果の利用責任: AIが生成した成果物が第三者の著作権を侵害していた場合、それを利用した企業が責任を問われます。
  • 「プロバイダ」とみなされる境界線

    外部AIツールを組み込んで自社サービス(チャットボット、分析ツール等)を顧客に提供する場合、中小企業であっても実質的に「AIプロバイダ」とみなされます。この場合、開発者と同等の「透明性の確保」や「安全性報告」の義務が生じる可能性があります。

    高リスク領域での厳格な規制

    特に、採用・人事評価、金融(与信判断)などの「高リスク領域」でAIを利用する場合、2026年以降はアルゴリズムの透明性や公平性に関する高度な説明責任が課される見通しです。


    4. 罰則規定と経営リスク

    AIガバナンスの欠如は、法的ペナルティと社会的信用の失墜に直結します。政府は監視体制を強化しています。

    法人重科による最大1億円の罰金

    個人情報保護法第179条に基づき、個人情報保護委員会の命令に違反した場合、法人に対して最大1億円の罰金刑が科される規定が存在します。2025年の法改正によりAI利用に関する義務が明確化されれば、この罰則規定が適用されるリスクが高まります。

    行政指導と公表リスク

    個人情報保護委員会は2023年6月以降、生成AI利用に関する注意喚起と指導を強化しています。行政指導を受けた事実は公表される可能性があり、取引停止や株価下落などの経済的損失を招きます。

    AI基本法(仮称)の動向

    2026年に向けて議論されている「AI基本法(仮称)」では、大規模言語モデル等のハイリスクAIに対し、法的拘束力のあるルール導入が検討されています。これにより、コンプライアンス違反が即座に法令違反となる「ハードロー」の時代が到来します。


    5. 支援制度・補助金の活用

    政府は規制強化と並行して、中小企業のAI導入とセキュリティ対策を支援する制度を拡充しています。

    「デジタル化・AI導入補助金」への再編

    従来のIT導入補助金は、2026年度より「デジタル化・AI導入補助金」へと名称変更・再編される予定です。

  • セキュリティ対策推進枠: IPA(情報処理推進機構)認定の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」利用料に対し、最大150万円(補助率1/2〜2/3)が補助されます。
  • 申請開始時期: 2026年3月下旬より順次受付開始予定です。
  • 相談体制の強化

  • 生産性向上支援センター: 2026年4月より、全国の「よろず支援拠点」に新設されます。専門家が現場を訪問し、AIによる省人化やセキュリティ実装を直接支援します。
  • AI事業者ガイドラインの更新: 2024年4月策定の第1.0版は、2025年3月28日に「第1.1版」へ更新予定です。より具体的な実務指針が示されるため、必ず参照してください。

  • まとめ:中小企業が今すぐ取るべきアクション

    2025年の法改正と2026年の本格施行に向け、経営者は以下の3点を直ちに実行に移してください。

    1 プライバシーポリシーの即時改定

    * 生成AI利用に関する条項を追加し、顧客データがAI学習に利用されないこと(オプトアウト)を対外的に明言してください。

    2 「非学習設定」の徹底確認

    * 現在利用しているすべてのAIツールについて、設定画面を確認し、入力データが学習に利用されない設定になっているか、または法人契約に切り替えるかを判断してください。

    3 IPA「AI安全基準」によるセルフチェック

    * IPA等が提供するチェックシートを活用し、現状のリスクアセスメントを実施してください。また、2026年度の補助金申請を見据え、セキュリティ体制の不備を洗い出してください。

    AIリサーチで御社の課題を解決しませんか?

    Deep Researchを活用した調査・分析サービスを提供しています。

    無料相談を予約する